お母さんの食事で赤ちゃんの遺伝子のスイッチがONに?
随分前のことですが「どんな病気を患うかはDNAにあらかじめ刻まれている」とTV番組で放送されていたのを覚えています。
「DNAを調べたところ乳がんになる遺伝子が見つかったから、まだガンにはなっていないけれど事前に胸を切除しました」
といった話も聞いたことがあります。
事前にどんな病気になるのかがわかるならそれを便利に活用できますが、本当にDNAにあらかじめ刻まれた通りに病気に患ってしまうのでしょうか?
このことに関しては「エピジェネティクス」という分野で「遺伝子にはON\OFF機能がある」ということが分かっており、ガンのDNAを持っていても、その遺伝子のスイッチがOFFになっていればガンにはならないという事が分かっています。
そしてその遺伝子のスイッチは、後の様々な要因によってON/OFFが切り替わります。その遺伝子のON/OFFを切り替えるのに使われるのが、以前のブログ「メチレーション」で説明したCH3(メチル基)です。
このCH3(メチル基)は遺伝子の発現をOFFにすることができるのですが、どの程度OFFにするのが適切なのでしょうか?エイミーヤスコドクターは「80%のDNAは発現されるべきではありません」と言います。80%ものDNAは発現するべきではないなんて、なんか意外ですね。適切にCH3(メチル基)がDNAをメチル化し、遺伝子の発現をOFFにしていないと、様々な病気の遺伝子がONになってしまうのです。
胎生時の環境でこんなに違う
2003年のデューク大学でメチレーションの効力を実証する実験が行われました。下の写真をご覧ください。
全然違う見た目をしています。ですがこの二匹のマウスは同じDNAの母親マウスから産まれました。
このマウスはアグーティマウスと言います。このマウスは発現すると白色の毛になり、肥満傾向になり、糖尿病になるという「1つの遺伝子」を持っています。
ぱっと見、左の白いマウスの方が健康なのかと思うかもしれませんが、左のマウスは不健康で右のマウスが健康なマウスです。
これは上述した「1つの遺伝子」がONになったかOFFになったかによって現れた違いです。ではこの遺伝子のONN/OFFはをどうコントロールしたかというと、妊娠中のアグーティマウスに、葉酸やB12のようなメチル供与体を豊富に含む食事を与えた群と、普通の食事を与えた群とに分けたという事だけです。
母親の栄養状態によって、生まれた子供の遺伝子のON/OFFに影響が出たという事です。栄養状態と言っても、ただカロリーを高カロリーにしたなどといったものではなく母親のメチル化の能力、要は遺伝子のスイッチをOFFにする能力を高める食事を与えたのです。
これを人間にあてはめたら、、、妊娠時に如何にお母さんがメチレーション回路が円滑に回る、健康な状態を保つかが重要であるかがわかると思います。子供の将来の為にお母さん自身の健康管理をしっかりとしなければいけません。
そして、このメチレーション回路がいかに円滑に機能するかは、実は栄養以外にもさまざまな事柄がかかわります。それについては次のブログで。