骨盤のゆがみ・ズレそして開き?
「骨盤がズレているような気がする」
「骨盤が歪んでいると整体院で言われた」
そのような方は多いのではないでしょうか?
「骨盤 ゆがみ」などで検索すると、様々なサイトで骨盤ダイエットや骨盤の開きを治す商品など山のように出てきます。
ですがこういった健康情報は実のところ間違いだらけ。画像を使って親切に解説しているサイトも突っ込みどころ満載すぎて、逆に突っ込む気力が失せてしまう程なんですが、、、当院に来られるクライアントも、間違った骨盤の知識のせいで無意味に思い悩んでいる方もおられるので、今回は骨盤について記事にします。
※今回は批判的な記事になるかもしれません。私は普段、他の手技療法の批判をしたりすることはしないようにしています。ブログで他の方が行っている事の批判をすることは初めてかもしれません。考えはそれぞれあると思います。当院に来られる方の参考になればと思います。
骨盤って本当に歪むの?
まず骨盤とは
↑の赤色部分の事を言います。
そして骨盤部分を取り出すと
↑これです。そして骨盤が歪むとすると動く部分は関節なのですが、関節は赤色で記された3か所あります。仙腸関節と恥骨結合です。
そしてこの3か所ある、仙腸関節と恥骨結合が動かなくては骨盤がズレたり歪んだりできないのですが・・・日本の解剖学所には「仙腸関節・恥骨結合は不動関節である」と書いてあります。
「不動関節・・・」動かないということです。
(※妊娠時のみリラキシンというホルモンが出て、恥骨結合の靭帯を緩めることで動きがでて恥骨結合は約5mm広がります)
ということで、医学的に見て骨盤は「ゆがまない・ずれない・ひろがらない」以上!
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・え!終わり?
いえ、まだ続きがあります。
このように、最近まで仙腸関節は不動関節だと思われていたのですが、最近「3mm~5mm動くことが出来る」という説が広まりつつあります。
動くのか動かないのかどっちやねん!って感じですが、今は医学的に見て「動く」という考えの方に移行しているとみて良いと思います。
日本の解剖学書には「不動関節」と書いてありますが、実は以前から外国の解剖学書には「微細に可動する」と書いてあります。今後出版される日本の解剖学書は「可動する」と記載されるようになるのかもしれません。
なんにしても、画像ではうまく判断できないほど、動くのか動かないのか議論されるほど、小さな可動域の話です。
死体解剖をしても、死後時間の経った死体の仙腸関節は動かなくなっています。そして大体の医師達は手技療法家ではないので、患者を手で触って微細な骨盤の動きを感知する技術はありません。そして画像で判断できるほどの大きな動きでもないので「仙腸関節は不動関節」と思われていたのかもしれません。
ですが手技療法の業界ではずいぶん昔から「仙腸関節は可動する」という考えがあり、医学と対立していました。熟練した手技療法家が触診すれば、ミリ単位の動きは容易に感じ取ることが出来ます。熟練した手技療法家にとっては「触れば明らかに動いているのがわかる」のですが、それは個人的な体験であり証明ができません。なぜ医学的にも仙腸関節が動くと言われるようになったのかはわかりませんが、仙腸関節の動きについて証明する論文がいくつかあるとの話を聞いたことがありますので、その方たちが頑張ったのでしょうか。
いずれにせよ、仙腸関節は動き、骨盤は歪んだり・ズレたりします。ただ3mm~5mmの小さな動きです。
私自身もこの微細な仙腸関節の調整を手技で行います。
でも動くからと言って、これはちょっとおかしい・・・
とても微細に骨盤は動き、歪みます。
それが事実ではあっても、インターネット上には骨盤の歪みに対して無茶苦茶な解説が氾濫しています。
以下、全て間違った解釈をしている画像集です
1つ目
↑骨盤の開きと足先の開きを結びつけるのは間違いです。
これは殆ど「股関節の動き」を見ているにすぎません。
数ミリしか動かない骨盤のゆがみよりも、可動域の大きい股関節の影響が大きすぎて全く指標になりません。膝関節、距腿関節など他にもつま先の開きに影響する関節が沢山ありますし。
次はこれ
左図の仙腸関節と恥骨結合は、関節のジョイントが離れてしまっています。関節がつながってない・・・浮いてる?これはSF的な世界です。出産時の恥骨結合はこのように広がりますが(それでも5mm程度)、仙腸関節が離れてしまったらもう身体はめちゃくちゃになってしまいます。もちろん歩けないのでタンカにのって病院へ行かなくてはならない状態です。
次は「骨盤の開き」について
よく「骨盤が開く」という言葉を目にします。
色々なビフォーアフターで「骨盤がこんなに小さくなりました」と写真付きで載っています。でも、骨盤が開くってどんな状態なのでしょうか?
骨盤は平面ではなく、厚みのある立体構造です。
後面は仙腸関節が、前面は恥骨結合がガッチリとくっついています。この構造をよく見てください。赤丸で囲った範囲は広がったり狭まったりすることが出来るでしょうか?
同様に正面から見た図↓
基本的に無理です。仙腸関節の滑りによって目ではわからないレベル(0.数mm~数mm)は変化する可能性があります。ですが一般的に言われている「広がる、狭まる」からはかけ離れた微細なレベルの話です。
こういった動き↓
これを「広がる、狭まる」というのなら確かにその動きはあります。赤色で記した関節面を支点として骨盤の上側が閉じたり下側が広がったり。ですがやっぱり目で見ても殆どわからない程度の動きです。
よくビフォーアフターで2cm3cm腰幅が狭まったりしている画像を見かけます。骨盤の調整だけではありえないことです。そんなに明らかに開いたり閉じたりするものを見過ごしていたのなら、今まで仙腸関節は不動関節だと言っていた医師たちはまず目の治療をした方が良いことになるでしょう。そこまで動いていたらそれは関節が「脱臼」しています。
ビフォーアフターに大きな違いが出るのは、筋肉や筋膜、内臓の位置や水分や姿勢、カメラの位置など骨盤以外の要素が変化したためと考えられます。
これもおかしい↓
これは骨盤が開いたり閉じたりしているのではなく、同じ形をした骨盤を違う角度から見ただけです。上記の骨盤を円柱で例えればこのようになります。
円柱自体の形は変わっていません。見る角度が変わっているのです。
こんなのもありました↓
これは開いているのでも閉じているのでもありません。全くのデタラメです。これはおそらく元々左が女性の骨盤で、右が男性の骨盤を描いたものだったのでしょう。誰かが画像に加工して、骨盤の性差の図を、骨盤の開きの解説図に変えてしまったんだと思われます。
骨盤のゆがみに関する情報は、上記のように間違ったものが溢れています。
ただ誤解してほしくないのは、骨盤関係の情報や施術が嘘ばかりなのではなく、微細な骨盤の歪みの調整はとても健康に役立ちます。骨盤の微細な歪みの調整によって、様々な不調を改善してきた幾つもの療法が存在し、それを実践する人たちは毎日の鍛錬によりとても高度な技術で施術を行っています。そういった人たちの行うものと、上記に記載したような間違った情報とは似て非なる物であるということをお伝えしたいのです。
そして、間違った知識から来る無駄な悩みや解決しようのないズレた方向性などを、できるだけ持たなくて済むようにしたいものです。
続きます
それは骨盤のゆがみじゃなくて姿勢の問題
下記画像を見てください。こういったものを「骨盤のズレ・ゆがみ」と表現しているサイトや治療院が沢山あります。
実際これらは姿勢の崩れをあらわしているものです。
骨盤自体は歪んではいません。
一般的に「骨盤自体の歪み」と「姿勢の崩れ」の違いは区別されずに、どちらも一緒くたに「骨盤の歪み」と呼ばれているのが現状のようです。
もう一度画像を見てください
言葉の使い方として、こういった姿勢の崩れのことを「骨盤が歪んでいる」と言えなくもないです。結局言葉をどう解釈するかですが、誤解を生みやす言い方だとは思います。実際一か所の姿勢の崩れは相互作用で全身に広がります。ですので歪んでいるのは骨盤だけではなく全身です。
こういった姿勢のズレに関して当院では、身体の感覚器をチェックしたり、フェルデンクライスメソッドなどで身体感覚を育てたり、位置感覚や認識の調整、筋膜リリースなどを行ってより良くしていきます。
最後に
色々ごちゃごちゃと書きましたが、お役に立てそうでしょうか?
骨盤に関する情報は、間違った解釈、言葉の認識の違い、ウソと言わざるを得ないものが溢れています。健康の為と思って頑張っていることが徒労に終わらないように。。。。
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